自分の手がけた仕事や編集に関する記憶を振り返りつつ、印象に残ったことを書き残していきます。
第2回目は最初に手がけた本格的なムック本『男のスーパーカタログ(スコラ社)』の続きです。
企業、店舗、ショップ……借りて借りて借りまくる!
『男のスーパーカタログ(スコラ社)』はさまざまなグッズを集めたムック本でした(前回の記事参照)。
グッズカタログといっても、ほとんどは借りポジではなく、新撮で構成していました。
そういう時代だったんです。
現在は写真を借りることが基本でしょうが、当時は商品を借りてきて撮影するのが基本でした。そうすることで雑誌の統一感やカラーを演出したわけです(最近はインスタなども出てきましたね。写真は個人レベルでオリジナルを演出するメディアと変化してきています)。
企業から品物を借りる場合は、送ってくれます。
それは企画書をFAXすればオッケーでした(当時はメールではありませんでした。まず電話→FAXの流れが基本でした)。
やっかいなのが、店舗からの借り出しです。
お店に行って、セレクトしてこなければなりませんでした。
そこで新人の出番です。
私が入社してけっこうやった仕事は、さまざまな店舗からグッズを借りてくることでした。
お店に行って、挨拶して、商品を選んで、借り出し伝票を作っていただき、持ち帰る。
これが基本です。
その作業が大量でした。
一日に何カ所も回り商品をお借りし、帰社後には品物を確認し、撮影にまわし、同時に原稿にするために基本データ等をまとめました。
これの繰り返しです。
このムック本をスタートに、編集者生活の初期にはめぼしい都内の専門ショップはほとんど調べ、行き尽くしたっていうほど歩き回った気がします。
多分、そういう時代だったのでしょう。
バブルっていうヤツですね。
借り出しの醍醐味は、セレクトの目→完成誌面のイメージ
借り出しは現場勝負です。
それが非常に面白かったでした。
誌面映えする色や形、特別な機能、金額など、さまざまな観点から商品を選んでいきます。しかも考え込む時間などありません。一瞬で選ぶことが基本です。
品揃えが充実していて、店員さんも親切だと、商品選びもはかどりました。
とはいえ、そうでない場合もあります。
じつは……そのときがイチバン面白かったでした。
誌面をイメージし、書く原稿内容を想像して選びます。
自分の頭の中で「魅力的誌面」を構成してセレクトしていくのです。
これはじつに楽しかったです。
戻ってきて先輩から質問されます。
「なぜこの商品を選んで借りてきたのか?」
そこで「なんとなく……」なんて答えたら、編集者としては失格です。
ハッタリでもかまわないので、自分の意見が言える人が評価されるのが編集の世界です。
その点で私にはピッタリの世界だったといえます。
その後、私は編集とデザインを同時にこなすことになるわけですが、ある意味では当然の流れだったんでしょう。
かなりこだわりがありましたから。
デザイン発注のときにデザイナーさんから言われた言葉で印象に残っているものがあります。
「これだったら、オレはデザイナーじゃなくて、レイアウターになっちゃうね。デザイン全体のことを考えられるからありがたいよ」。
要するに、発注時にラフデザインを持っていくわけですが、完全にページイメージを作り込んで渡すことが多かったんですよね。
いいか悪いかは別問題ですが……。
とにかく借り出しによって、編集&デザイン頭が鍛えられたことは間違いありません。
これは普通の編集時にも役立っていくこととなります。
それからというもの、どんな取材でも進行中にページイメージを頭の中で作りながら進めるクセが完全についてしまいました(これも善し悪しはありますが)。
借り出ししてきた商品の処理はどうしたのか?
じつは、借り出しっていうのは、借りてきた後の作業がもっとも大変でした。
最初にも書きましたが、品物を確認し、撮影にまわし、同時に原稿にするために基本データ等をまとめるといった「商品の整理」ってやつです。
当時はスマホがあったわけはありません。それどころかデジカメもありませんでした。
なので、借りてきた商品が返却時に間違わないようにイラストなんて描いたりもしました。
けっこう、イラストの役割は大きかった気がします。
撮影の際にはパッケージなど、すべて外して撮影しますから、なおさら混乱します。
そんなときに役立つのがイラストというわけです。
また、写真があがってくる前に原稿を書く時にも役立ちました。
商品の特徴をポイントにして描いたイラストは、かなり好評?だったと思います。
「おおっ、迷いがない線だね!」
先輩にデータを渡した時にラフ絵を見て言われた言葉はいまだに覚えています。
・ ・ ・
当時はいい時代でした。
貸してくれた商品をそのままくださる企業も少なくありませんでした。
それなりに高級なモノが無料で入手できました。
ただ、面白いのはそういう時代だったからこそ、「欲しい!」とも思いませんでした。
私は有名タレントが着用した衣装をもらって、役得気分を味わった程度でしょうか。
そんな時代でした。
では、また!