成果物(印刷物)などができるまでの行程は、ネット媒体なども基本的には同じです。ほぼ変わりません。
一般的な作業の流れの紹介と合わせて、できる編集者はどんなところで“見えない力”を発揮し、よりよい成果物の完成に導いているかを紹介します。
成果物ができるまでの作業の流れ(行程)
まず、基本となる流れから紹介します。
- 企画&リサーチ
- 取材(素材集め&発注)
- 編集(素材の整理)
- デザイン発注
- 入稿
- 校正
- 印刷
- 完成
かなりザックリしていますが、大まかな流れはこのような行程となります。それぞれの行程の内容はだいたい想像がつくと思います。
どの行程も大切ですが、根底に流れている共通項があります。その共通項が、できる編集者の絶対条件ともいえます。
それは……。
コミュニケーション能力です!
できる編集者はそれぞれの行程でどのようなコミュニケーション能力を発揮するかを紹介しましょう。現在はもう必要されなくなった部分もありますが、ひと昔前の状況は今でも参考になるはずです。
(1)企画&リサーチでのコミュニケーション能力
これは言わずもがなですが、企画を立てる時には「裏付け」が必要となります。
「裏付け」とは発想を実際に形にするために不可欠な要素です。具体性が高いほど、比例して企画の実現性も高まります。
できる編集者はネットワークが広く深く、さまざまなレア情報をキャッチします。また、敏感に流行の兆しを受信します。
感じる能力が普通より発達しているせいだと考える人は多いでしょうが、私は人との関係性の深め方から得られると考えています。
できる編集者は、日常から気になったことを掘り下げて相手に教えてもらうコミュニケーション能力に長けています。
(2)取材〜発注でのコミュニケーション能力
素材集めは芋づる式に引っこ抜くことができます。
とっかかりを作ったら、できる編集者は一気に素材となる情報を引っこ抜きます。非常に貪欲です。
さらに取材の場合は、ポイントを明確に指示します。
基本は自由ですが、最低限押さえておいてもらいたい写真、文章のポイント、デザインの見せ方などは、きっちり相手に伝えます。
そうしないと、出来上がりに対する不満が大きくなります。
また、発注された側も余計なことに悩んで時間をロスしてしまいます。
できる編集者はコミュニケーション能力を発揮して曖昧さを回避し、質の高さをキープし、時間のロスを減らします。
(3)入稿〜完成でのコミュニケーション能力
入稿から完成まではたいしたコミュニケーション能力は必要ないんじゃない?
なんて思う人がほとんどでしょう。
しかし、編集者の醍醐味は、ある意味ではこの部分にあります。
私はプロダクション育ちですので、さまざまな出版社の仕事をしました。そうすると出版社や担当編集者によってルールやクセがあることに気づくようになります。
いまはどうなのかわかりませんが、20年前は出版社や担当者によって独特の文化がありました。
さらに細かいことを言えば、出版社が同じだとしても出版物が違うと進め方や考え方が異なることも珍しいことではありませんでした。
できる編集者はそういった文化の違いをコミュニケーションで埋めていきます。
相手の求めている内容を掴み取り、締切の交渉を行い、完成後の満足度もチェックし、より円滑に仕事が流れていくことを心がけていきます。
これは、相手に迎合して言いなりになるということではありません。
ときには相手と真正面からぶつかり合っていくことも求められます。
私は生意気な部分がありましたので、例えば「私をとるか、担当者をとるかを決めてください。担当者を変えないなら、仕事を降ります」なんて感じで毅然として戦ったことも何度かあります。
これはコミュニケーション能力というより交渉術みたいなものでしょうが、できる編集者は間違いなくコミュニケーションを大事しています。
だからこそ最終的にいいモノ(成果物)ができるわけです。
編集者に“ 孤高の職人的な要素 ”は必要ですが、それだけではつとまりません。
編集者に限ったことではないでしょうが、やはりコミュニケーション能力は必須です。成果物は自分以外の誰かとのコミュニケーションの結晶体ともいえるでしょう。
もしコミュニケーションにあまり自信がない人は、大きなハンデになりかねません。反対に人間関係を深めるのが根っから好きな人は、それだけでもできる編集者の要件を満たしているといえます。私は子どもの頃から「人が好き!」というスタンスでしたので、まさに天職と巡り会ったといえます。
あなたはコミュニケーションは得意ですか? 編集者になりたい人は、そこから冷静に考えてください。